好きの海に溺れそう

「杏光研修終わったって言ってたよね、今日どうだった?」

「そう!聞いてよ~…。取引先の出版社から早めに回答してもらいたかった案件があったんだけど、回答が期限の時間から遅れて、それで今日遅くなっちゃったの…」

「わ~…それは大変だったね」

「でも仕事ってこういうの付きものなんだよね、きっと…」



それでも嫌なものは嫌だけど。



「あっあとね、間宮くんのマネジメント担当になったよ」

「あ、そうなの?」

「うん、頑張る~」



あたしがそう言ったら、海琉が向かいに座ってるあたしの手を自分の口元に寄せて軽くキスした。



「…? 嫉妬?」

「…仕事だから、口出しちゃいけないってわかってるけど……」

「~…!」



本当に好き…。



あたしの仕事を尊重してくれているのも、でも素直にそのモヤモヤも伝えてくれるのも…。



「海琉以外興味ないよ?」

「知ってる…」



今すぐチューしたい…。



せめてぎゅってしたいのに…。



ここが家ならなあ…。



「あ、そういえばね、杏光に報告しようと思って」

「なに?」

「俺、調理師の専門学校に進学する」

「え~!すごく良いよ!」