好きの海に溺れそう

「このカメラ、アマチュアの間で有名なちょっと良いやつじゃん!」

「小太郎くんにも相談したりして、自分の買える範囲でちょっと奮発した」

「最高だよ~!」



首元にぎゅっとしがみつく杏光。



そんな杏光の後ろ頭を撫でた。



杏光は身体を離して、カメラの設定を始めた。



しばらく設定をいじった杏光は、「よし」と満足そうな顔で言ってレンズをこっちに向けた。



えっ、俺を撮るの…?



ちょっと顔を背けると、切られるシャッター。



見せてもらうと、寝起きでちょっとけだるそうな顔の俺。



でも生活感がいい具合に味になってる。



やっぱ杏光、うまいな…。



素人目にも、うまいか下手かくらいはわかる。



「タイトルは、『私だけが知ってる顔』」

「なんか恥ずかしい…」

「このカメラで一番最初に撮ったのは海琉っていうのが重要」



楽しそうにしてるからプレゼント選びは成功だ。



俺も嬉しい。



「あたしもプレゼントあるの!」



杏光はそう言ってカメラを脇に大事そうに置いてから、部屋をさっと出て行った。



…家に取りに行った?



そう思ったけど、杏光は後ろ手に何か隠してすぐに戻ってきた。



「キッチンに隠させてもらってたの」

「うん?」

「じゃーん!」