好きの海に溺れそう

~杏光~

海琉と旅館に来た。



広くて綺麗な部屋。



海琉が取ってくれたんだよね、この部屋…。



それだけで全部が嬉しい。



この旅館は温泉も引いてて、あたし達は着いて早々、部屋に置いてある浴衣を持ってそれぞれ温泉に行った。



ていうか…。



海琉の浴衣とかやばくない?



直視できるかな…。



家族ぐるみで温泉旅行は何回か行ったことがある。



だけど好きになってからこんなの初めてで、海琉の浴衣にも多分絶対にときめいちゃう。



なーんて考えながらお風呂から上がって、あたしも脱衣所で浴衣を着た。



長湯したせいでまだちょっと頭がぼーっとする。



多分海琉はもうとっくに上がって部屋にいるはず。



急がなきゃと思って早めに頭を乾かして脱衣所をあとにし、部屋に向かった。



だけどそこでチャラそうな男たちにつかまった。



めんどくさいからナンパはやめて…。



「超かわいくね? 友達とかと来てんの?」

「俺らの部屋来ない? 男だけで暇でさー」



無視して進もうと思ったら、狭い廊下で行き先をふさがれた。



あーうっとうしいな!



そのとき、こいつらの向こう側に海琉がいるのが見えた。



「あ…」



よかった!



「海琉―!」



海琉に手を振る。



あたしに気づいた海琉が、すごい速さでこっちに来た。



「え、なに男いんのかよ…」



チャラ男が舌打ち。



だいたい、どう見てもお風呂上がりの女が一人でいる時点で彼氏との旅行だって察してほしい。



「行こ」



海琉があたしの手をぐっと引いた。



そしてそのままずんずん先を歩く。



ちょっ、早い早い。