「やだ、告白じゃない?」

「入学したばっかなのに?」

「ひとめぼれかもよ!」


そんな女の子たちの跳ねるような声が聞こえた。

帰ってきたら、絶対に追及される。
もう、腹をくくるしかないな。

深いため息をつきそうになってすぐに、在田先輩が目の前にいるのを思い出す。
私はため息をゴクンと飲み込んで、渋々「はい」と答えたのだった。



在田先輩に連れてこられたのは、階段の踊り場だった。

昼休みだというのに人気はなく、人目がないことにホッとする。


「それ、昨日間違えて渡したみたいで悪い」


私の手に握られている進路希望調査票を見て、在田先輩はかるく頭を下げてくる。


「あ……いいえ! 私も気づかずにすみませんでした」


私はヘコへコしながら、進路希望調査票を手渡した。

なんだろう、雅臣先輩だとこんなに緊張しないのにな。

在田先輩の纏う空気は、常に静電気をまとっているようにピリピリしている。

だから、緊張して体の動きが硬くなるのかもしれない。