「和歌は情熱的に恋を歌う」

「あっ……」


重なった視線の向こう、君の瞳の中に炎が見えた気がした。

それは景臣先輩の言う、情熱とやらなのだろうか。

──なんて、やっぱりキザだなと私は我慢出来ずに「ふふふっ」と笑ってしまう。

すると景臣先輩の頬はみるみる赤みを帯びていき、照れているのだと思った。


「笑ってくれるな。俺はそのくらい、清奈に恋をしているんだから」

「はい、すみません。けど……私も同じなのでお互い様です」


そう、それは燃ゆるほどの恋だった。

君と時には衝突し、自分の気持ちが見えなくて苦しいかったけれど、思いが通じあってからは愛しいが溢れる。

もう2度と離れられないのだろうと、彼を見つめながらぼんやり考えた。


「好きだ、清奈」

「私も景臣先輩が──」


そう言おうとしたら言葉ごと、吐息もすべて攫うように景臣先輩が私に口づける。

──好きです、景臣先輩。

言えなかった言葉を心の中で囁いた。


私は自分が何者になりたいのか、ずっとわからなかった。

けれど今なら、見失わない。

私は君と出会って夢を、誰かをこんなにも愛しいと想える自分を見つける事が出来た。

君という存在が今の私を象っている。

だから、これから先もずっと一緒にいましょうね。

恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


Fin.