「清奈は……もっと美人になった」
「お、お世辞ならいらないです」
「本心だ、清奈」
そう言った景臣先輩は、私を見つめてフワッと笑った。
これから先はこの笑顔をそばで見つめていても、いいんですよね? ねぇ、答えて景臣先輩──。
すると、景臣先輩は私の心の声が聞こえていたかのように答える。
「これからは、ずっと一緒だ」
「──っ、はい!」
もうこの人から離れない。
君だけを想い、君だけに永遠に恋をする。
この気持ちだけは、何があったとしても見失わない。
「つくばねの 峰より落つる 男女川
恋ぞつもりて 淵となりぬる」
「それは……」
景臣先輩は、和歌を詠んだ。
初めて高校の古典研究部の部室の扉を叩き、彼と向き合った時、私が景臣先輩を雅臣先輩だと勘違いして告白した和歌と同じだ。
この和歌は山の頂から流れ落ちてくる川が、細々としている流れから次第に水かさを増して深い淵となるように。
恋心も次第に募って、今は深く大きくなっていますという意味だ。
「今度は俺が清奈に改めて、告白してるんだ」
「ふふっ、和歌で告白って……私達、結構キザですよね」
「いいんじゃないか?」
景臣先輩の手が「え?」と首を傾げた私の頬にかかる。
私は不思議に思って、問うように彼を見上げた。


