「それって……」

「私が辛い時、そばにいてくれたのは景臣先輩です。自分が傷ついても、私の心を守ろうとしてくれたあなたの事が……」


目を閉じて、大きく息を吸い込む。

そして静かに目を開けて、吐息にありったけの想いと声を乗せた。


「──好きです、景臣先輩。他の誰でもなく、あなたの事が大好きです」


そう言って笑えば、息を呑んだ景臣先輩は、ぶつかるようにして私を抱き締める。


「か、景臣先ぱっ──」

「好きだった、ずっと……!」

「え?」


景臣先輩の切羽詰まったような声に、胸が締めつけられるようだった。

触れる自分以外の体温に、心臓が騒いで困る。

彼に伝わってしまうのではないかと、気が気じゃなかった。


「雅臣から清奈の話を聞くたび、いつ現れるかもわからないお前を待つ時間の中で………」


景臣先輩の口から零れる想いに比例してか、私を抱きしめる腕にも力がこもる。


「会った事もない清奈の存在が、心の中でどんどん大きくなって……」


私を抱きしめたまま、景臣先輩はずっと胸に秘めていた気持ちを紡いでいく。

彼の葛藤が、溢れんばかりの愛しさが、触れ合う体からダイレクトに伝わってきて、私はたまらずその胸に強くしがみついた。