「はぁっ、はっ」
私は、みんなの想いのタスキを背負っている。景臣先輩に会いたいのはみんなも同じだ。
けれど、景臣先輩に会う機会をみんなは私にくれた。
「絶対に、会わなきゃ……っ」
ホームに上がるための階段を息を切らしながら駆け上がる。
足が痛い、息が苦しい、頭がボーッとして耳鳴りがする。
それでも、気持ちだけで体を無理やり動かした。
そして最後の一段に足がかかり、視界が開けたその瞬間──。
『ドアが閉まります、ご注意ください』
そんなアナウスが聞こえて、心臓がバクバクと加速する。
──駄目、閉まらないで……!
私は、大きく息を吸い込む。
──お願い、行かないで!
その一心で声の限り叫ぶ。
「行かないで、景臣先輩ーーっ!!」
自分でも驚くくらいに、大きな声が出た。
駅のホームにいる電車から降りた乗客の何人かが、急に叫んだ私を不審そうに振り返る。
そしてプシューッという空気が抜ける音と共に、無情にも閉まった扉と走り出す電車を呆然と見送る。
「はぁっ、はぁ……っ」
私は両膝に手を当てて、身を屈めると乱れる呼吸を整える。
その瞬間、糸が切れたみたいに「うっ」と嗚咽が唇の隙間をぬって外に零れた。
「うっ……ふっ、う」
俯くとジワリと視界が歪み、ポタポタと落ちていく涙。
顔を上げて、景臣先輩がいなかったらどうしよう。
皆の気持ち、私の想い。何も伝えられないまま、離れ離れになってしまったら……絶対にこの日を後悔する。
私の声が届いたかどうかはわからない。
「けど……けどっ!」
今、君に伝えなくちゃいけない事がある。
お願い、気づいて景臣先輩──そう願った時だった。


