「顔色が悪いよ、本当に大丈夫?」
「紫ちゃん……」
彼の事を相談したいけれど、いきなり「実は、雅臣先輩はまったくの別人なんです」、なんて言えない。
みんなも戸惑うだろうし、景臣先輩が隠していたものを私がバラすという事に抵抗があった。
「大丈夫……じゃなさそうだね」
紫ちゃんはそう言って、机の上にある私の両手を優しく包み込むように握った。
「紫ちゃん……?」
急にどうしたのかと、彼女の顔をじっと見つめれば、私の心を内側から温めるような優しい笑みが返ってくる。
「私が辛い時に清奈ちゃんがそばにいてくれたように、今度は私が清奈ちゃんのそばにいるよ」
「あ……」
紫ちゃんの優しさが、胸に染みていくようだった。思わず泣きそうになって、それをなんとか堪える。
すると、紫ちゃんは言いにくそうにして、静かに告げた。
「今日から雅臣先輩、しばらく休むって」
「……え?」
景臣先輩が学校を休むって、いったいどうしてだろう。
昨日会った時は元気だったのに……もしかして私のせい?
私が感情に任せて彼を責めたから……。
その考えに行き着いた私は、サッと血の気が引いていくのを感じる。
今頃、私の顔は青ざめている事だろう。


