「私はもう、自分で自分の事は決められる!」

「清奈……あなた、親になんて口の利き方をするの」

「いつもそう! ふたりは私に医者になる事を強要して、意見なんて聞いてくれた事なかった!」


私はいつもいい子で、ふたりに反抗した事なんてなかった。

でも今日だけは、いつもみたいにいい子のフリをする余裕がなかった。

たぶん、景臣先輩の事が原因だろう。


「私はふたりの人形じゃない、ひとりの人間なの!」

「清奈……」


お母さんが呆然と呟く。

冷ややかな無表情以外の顔を見たのは、記憶の限りこれが初めてかもしれない。

そんな事を考えながら、私はキッと両親を睨みつける。


「言いなりならなきゃいけないのが子供なら、私は親なんていらない!」


そう言い捨てて、私はリビングを飛び出すと、2階にある自分の部屋へ走る。

反抗の意を込めて、ドタドタと足音を鳴らしながら階段を駆け上がり、扉をバタンッと強く閉めた。


「はぁっ、はぁっ……うぅっ」


扉に背中を預けて、ズルズルと座り込む。

真っ暗な部屋の窓から差し込むのは、いつもより寂しげな月光。

私はぼんやりとその月を見上げて、やるせない思いに打ちひしがれていた。