「私、小泉 清奈」

「あ……物部……紫(ものべ むらさき)」


ぼそりと、名乗られた。

そしてすぐに、視線はスマホへと向けられてしまう。

私も人付き合いは得意な方ではないけど、物部さんほどではないと思う。


……致し方ない。

相手に話す意思がないんだし、これ以上会話する必要性もないよね。

私は手に持っていた百人一首の本を開いた。

周りが友達を作ろうと躍起になっている中、私たちの周りだけが静かだった。

でもそれが、不思議と心地良く感じたのは……なぜだろう。