雅臣先輩はどういうつもりで、あの和歌を詠んだのだろう。

それが気になってからというもの私はこの2年間、雅臣先輩のことばかり考えていた。


そして、いつの間にか……雅臣先輩のことが好きになっている自分に気がついた。

だから、会いたい一心で両親の希望の私立高校を蹴ってまで雅臣先輩が行くと言っていた公立高校を受験した。


そしてついに、この日がやってきたのだ。

私、小泉 清奈(こいずみ せいな)は今日から楓(かえで)高校の一年生になる。

だからといって、色気づいたりはしていない。

胸元まであるお父さん譲りの色素の薄い栗色の髪は、中学の頃と同様に下している。


変わったことと言えば、制服くらいだ。

中学の時はセーラー服だったが、今は真新しいブレザータイプの制服に身を包んでいる。

友達ができるのか、勉強についていけるのかについての不安はない。

私にとって大事なのは、雅臣先輩に会うことと、大学への進学だ。


勉強に関しては、部活終わりに家庭教師から教わることになっているから、心配はないだろう。