「ふあぁぁぁ……」



まだ一限が終わったばかりだというのに、だるくて眠くて仕方がない。



「おっ、隼人が欠伸なんて珍しい。……さては、昨日本当に送り狼に」



ニヤニヤと笑う昴の肩を“ボコッ”って音が鳴るほど、思いっきり叩いて立ち上がる。



「っつ、痛っ〜!! 図星か、図星だな?」


「んな訳ないだろ。ったく、こっちは凪咲に振り回されて寝不足だっての」



昨日……。

再び凪咲のマンションまで送ると、申し訳ないからと言って「少し上がってお茶でも」なんて言葉をかけてきた。


あまりにも無防備で警戒心のない凪咲に、女の一人暮らしの心得なんかを語り……。


「分かった?」って聞けば、「はい」って答えてくれたものの、



「けど、佐倉先輩なら大丈夫ですよね!」



なんて満面の笑みを浮かべて言い放った。


俺だって一応男なんだけど?


何でか妙に懐かれて信頼されている。


それは確かに嬉しいけどさ。


思い出しただけで肩の力がドッと抜け、大きくため息をつきながら教室のドアを押して廊下に出ていった。


「つーかさ、隼人」