「凪ちゃん、起きて?」



周りが彼女のことを“凪ちゃん”って呼ぶから、俺もつられてそう呼んでいた。


顔にかかる髪を耳にかけて、何度か名前を呼んでみたけれど起きない。


まったくどうしたもんだか。


そんな俺の様子を興味津々と眺める祥子や先輩たち。


再びため息をついた俺は、肩を叩きながら呼び掛けた。



「凪ちゃん、凪ちゃん、凪……」



後ろの野次馬が気になる。


何度呼び掛けても反応してくれなくて、困り果て頭を抱える。


早く起きてくれない?


そんな思いからか、勢い余って大声で彼女を呼び捨てた。



「起きろって、凪咲!!」


「は、はいっ!!」



……いや、それで起きる?

目をパチクリさせて体を硬直させている彼女。



「ブハーッ!! 二人おもしろーい! 隼人のキャラも崩れてるし、アハハハハッ!!」



祥子の言葉の後、辺りは大爆笑。


一人その状況を理解していない彼女はキョトンと座っていた。