藤井凪咲は見事に第一印象を裏切らない娘だった。


いや、それを上回るほど。



「ちょっと隼人ー! 凪ちゃんお酒も飲んでないのに潰れちゃったんだけど」



バイトが終わった後、重い足取りでやってきた居酒屋のドアを開けるなり、祥子が大声で叫んできた。


第一声がそれかよ……って。



「何で?」



貸し切り状態の店内の座敷の一番端に、彼女の姿はあった。


正座をして壁に寄り掛かり、顔を伏せている。



「んー、疲れていたんじゃないかな? 隼人が来るまで寝かせてた〜」


「隼人、凪ちゃん送ってあげな」


「凪ちゃん可愛いからって、送り狼になるなよ〜」



祥子に続いて先輩らも、既に彼女を送るのは俺だと決め付け冷やかす。


さすがに先輩らに言われると断ることもできなくて、深いため息をついて靴を脱ぎ捨て、彼女の傍に寄った。


屈んで顔を覗きこむと、周りが大声でドンチャン騒ぎしている中、気持ちよさそうに寝息をたてて寝ている。


ったく……何か放っておけないやつ。