「その雰囲気が怪しいんだけどなぁ〜」



昴は俺らをからかうかのように言葉を続けた。


腕を組み一人で頷き、再び口を開きかけた……その時、静かに黒い影が近づいてきた。



「昴? あんた調子に乗りすぎじゃない?」



低いトーンで声を震わせ、微笑しながら昴を下から見上げる。

梅崎千理(ウメサキチリ)
昴の彼女。


上目遣いなのに負のオーラが漂っている気がして、昴の血の気が引いていくのが伺える。



「ごめんね千理! もう調子に乗らないから、怒らないで!!」



この二人付き合って間もないんだけど、年下の千理に昴が完全に尻に敷かれている。


明るい昴に、綺麗だけどどこか影のある千理。


両極端な二人は案外いいカップルなのかもな。


そんなことを思っていると、パンパンッと手を叩く音が部室に鳴り響いた。



「はい、そこまで! まだ新入生に挨拶さえしていないでしょ。みんなごめんね」



その場をたった一言で仕切った華田花梨(ハナダカリン)は、俺らの学年の中で一番しっかりしていて、リーダー的存在。