「うっそだー。隼人がそんなことするわけないじゃん」
さも当たり前のように笑いながら否定され、昴が必死になる。
否定された俺ではなく昴が……。
「本当だってば! ほらこの娘、なぎさちゃん!」
「あ……は、初めまして。藤井凪咲です」
彼女は急に体を前に押し出され、戸惑いの表情になりつつも勢いよく深々とお辞儀をしている。
俺はそんな姿を見ながらさっきの出来事を思い出して、またもや吹き出しそうになってしまった。
このなぎさっていう娘、俺のツボかも……。
一挙一動俺を楽しませてくれる。
勢いよすぎて、あーあ。
また肩に下げていたバッグひっくり返すし。
「きゃー!! すみませんっ……すみません……」
慌てる姿が妙に可愛く見えてしまうのは、この娘が持つ独特な雰囲気のせいだろうか?
そんな彼女を見て、メンバー一同大爆笑。
彼女以外の新入生でさえ、堪え切れずに声を出して笑っていた。
「はい、気を付けて。バッグのファスナーちゃんと閉めとけよ」
「あっ、そうですよね、すみません」
拾った荷物を集めて手渡すと、少し俯き苦笑していた。

