「男なんて女の前じゃかっこつけて弱音をはかないだろ?」


「そうですね……。こんな情けない自分は見せたくないですね」


「だよな〜! だから、悩んでどうしようもなくなったらいつでも言って来いよ。佐倉が言いたくなったら話を聞くからな。
最終的に決めるのは自分だけど、話すことで見えてくるものだってあるし、気持ちが楽になるかもしれない、な?」



そう言うとやっと俺に視線を向けてきた。



「藤堂さんは最高の先輩ですね」


「当たり前だろ?」



大きく口を開けて笑う藤堂さんに、感謝の気持ちでいっぱいになる。


男なんて見栄とプライドの塊。


彼女にはかっこ悪い姿なんて見せたくないし悟られたくない。


そんな時、藤堂さんのように肩を並べて話せる相手がいるだけで、こうも気持ちが軽くなるものなんだ。



「さ、遠慮せずにどんどん食べろ! 俺の奢りだ! しかし、お前が頼んだものって……」


「あ、彼女がよく作ってくれるものなんですよね、つい」


「ハハッ、そっか」



藤堂さんとの飲みの時間はあっと言う間だった。


少しだけとれた胸のわだかまりに、気持ちが楽になる。


悩むだけ悩む……か。



凪咲、もう少しだけ話すの待ってくれ、な。