「……行かせちゃってよかったの?」
突然声をかけたわたしに、城崎くんは反射的にこちらを振り返った。
振り返った先に居たわたしを怪訝そうに頭から足まで見た後、
「水原さんの……」
「5組の相沢 芹華です。噂はかねがね……日菜から聞いてるよっ」
お弁当を渡しに行ったときのことを思い出したのか、日菜琉の名前を出した彼に自己紹介をした。
噂はかねがねって……言葉にでも反応したのか。
口を噤んで何やら考え出した城崎くんに、
「いろいろ日菜を助けてくれてありがとっ」
ひとまずお礼を告げてみる。
これで自分が日菜琉を助けてくれた時のことが浮かぶかと思ったけど。
わたしの言葉に城崎くんはますます不思議そうに首を傾げてしまった。
待ちぼうけも元カノ登場も、彼は無意識に日菜琉を助けてくれてたのかもしれない。
今だってそうだ。
有宮くんのところに日菜琉を送り出してくれた。
「日菜の話を聞いてたら、城崎くんのおかげであの二人がちゃんとくっつけたみたいなもんだしね」
そう思って城崎くんに言ったら、彼はすぐに眉をひそめて難しい顔になってしまった。
「俺が……善雅に水原さんを薦めたから」
俺が善雅を挑発する為に、たまたま廊下を通りがかった水原さんを指名したりしたから……。
そう呟く城崎くんは辛そうに見えて。
それが彼を苦しめているなら、少しでも軽くしてあげたい。
「それも運命ってヤツだったんじゃない?」
出来る限りアッサリとした口調で彼に告げると、呆気にとられたようなポカンとした顔になっていた。