荷解きをしただけで、あっという間に夜になってしまった。それでもまだ、閉じられたままの段ボールがいくつか残っている。

(明日で全部片づくかな〜)

そんな心配をしながら、リビングに隣接する和室に布団をひきはじめる私を見て、光一さんが怪訝な顔をする。

「なんで、こっち?でかいダブルベッド買ったじゃん」
「あぁ。あれは光一さんが使って!
私はこの布団で十分だからさ。古いけど、まだまだ綺麗だし」
私は敷きたての布団にごろりと横になって、ストレッチをはじめた。
「いやいや。ふたりで使うためのダブルベッドだろ」
光一さんはこめかみを押さえながら、言う。
「いーよ、いーよ。無理しないで。光一さん多忙だし、睡眠は大事にしないとね」

(ひとりでゆっくり眠りたいって言ってたもんね。そこは尊重すべきよね!ふふ。できる妻っぽいな〜、私ってば)

私がそんな自己満足にひたっていると、光一さんがすいと近づいてきた。
そして、まるで幼い子どもにするように、ひょいと自分の肩に私をかつぎあげた。
私は思わずきゃっと声を上げる。

「かっこ悪いけど、前言撤回!俺が一緒に寝たいから、そうして」
「え〜」

光一さんはスタスタと寝室に入っていく。私を優しくベッドに座らせると、自身は床に膝をついた。
ほんの少しだけ、私が光一さんを見下ろす形になる。

「それは、今夜だけじゃなくて、ずっとってこと?」
「うん。これから、ずっとってこと。嫌か?」

直情的なまでにまっすぐな光一さんの眼差しを受け、私はふるふると首を横に振った。