【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



――ダンッ!


俺は、壁を殴った。


(……冗談じゃない)


妹と結婚することも、心春をバカにしたことも、何もかも……この人のことを許せない。


心からの殺意を覚えるくらいに、俺は、この男を憎んでいる。


母さんと俺から父さんを奪い、沙耶の心に大きな傷をつけた男……


俺を見て、目を細めた祖父。


「……嫌、なのかい?」


「当たり前だ。冗談じゃない」


「そうだよ。冗談じゃない。私は本気だ」


「なお、質が悪いな」


俺の反抗的な目を見、彼は再び笑うと、机の上にあった書類を手に取り、


「……少し、調べさせてもらったよ」


残忍に、顔を歪ませた。


「その心春という女を、お前は大層、大事にしているらしいな?けど、その娘をお前は無理矢理、手にいれたというではないか」


心が、痛む。


その通りだ。


俺は、春を傷つけた。