「――心優、入ってきなさい」
静かに、開いたドア。
現れたのは、小さな女の子。
青い瞳、金色の髪、記憶の中にあるあの人と同じ、瓜二つのその容姿……
「……かあ、さん?」
そう、そっくりだったのだ。
違うところと言えば、身長くらいで……
「藤島心優。彼女が、お前の妻にしようと思っている子だ」
「藤島……心優?」
「ああ。この子は、私の孫だ。アイラの、娘だよ」
(……どういうことだ?)
母さんと父さんの間には、俺しかいなかったはずだ。
妹がいるなんて話、誰からも聞いたことがない。
母さんがいなくなって、その後……母さんは、何をしていた?
「初めまして……大樹さん」
母さんに似た、声。
「お逢いできて、嬉しいです……」
青い瞳は、俺を捉え……
「藤島心優ともうします。末長く、よろしくお願い致します……」
「立派な淑女だろう?」
艶然と、微笑んだ。
けど、光がない。
目は虚ろで、お人形のようで。
祖父は、怪しげに嗤う。
「お前達が藤島を継いでくれるなら、私も安心して、死ねるな。――良かったよ。あんな汚いところで、大樹が染まる前で……」
「……」
「……汚い、ところ?」
俺は訳がわからずに、聞き返す。
「そうだろう?だって、なんだったかな……ああ、心春さんだ。彼女のもとでずっとお世話になるなんて……自身の自立もできないなんて、とても恥ずかしいよ。どうせ、お前が、黒橋の息子だから、近づいてきたんだろう?もう、心配はいらない。私が……」
全ては、この人が正しい。
そんな、狭い世界。
そこに……俺は囚われるのか。
逆らうことを知らない、この小さな妹と。


