【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「――心優、入ってきなさい」


静かに、開いたドア。


現れたのは、小さな女の子。


青い瞳、金色の髪、記憶の中にあるあの人と同じ、瓜二つのその容姿……


「……かあ、さん?」


そう、そっくりだったのだ。


違うところと言えば、身長くらいで……


「藤島心優。彼女が、お前の妻にしようと思っている子だ」


「藤島……心優?」


「ああ。この子は、私の孫だ。アイラの、娘だよ」


(……どういうことだ?)


母さんと父さんの間には、俺しかいなかったはずだ。


妹がいるなんて話、誰からも聞いたことがない。


母さんがいなくなって、その後……母さんは、何をしていた?


「初めまして……大樹さん」


母さんに似た、声。


「お逢いできて、嬉しいです……」


青い瞳は、俺を捉え……


「藤島心優ともうします。末長く、よろしくお願い致します……」


「立派な淑女だろう?」


艶然と、微笑んだ。


けど、光がない。


目は虚ろで、お人形のようで。


祖父は、怪しげに嗤う。


「お前達が藤島を継いでくれるなら、私も安心して、死ねるな。――良かったよ。あんな汚いところで、大樹が染まる前で……」


「……」


「……汚い、ところ?」


俺は訳がわからずに、聞き返す。


「そうだろう?だって、なんだったかな……ああ、心春さんだ。彼女のもとでずっとお世話になるなんて……自身の自立もできないなんて、とても恥ずかしいよ。どうせ、お前が、黒橋の息子だから、近づいてきたんだろう?もう、心配はいらない。私が……」


全ては、この人が正しい。


そんな、狭い世界。


そこに……俺は囚われるのか。


逆らうことを知らない、この小さな妹と。