「京子さん、鬼化ってなんなんですか?」
全てを聞き、受け止める。
その覚悟は、とうにできているから。
「……鬼化はな、新月の夜か、感情が高ぶったときにおこる。一度目は、人間ではありえないくらいの運動神経を発揮する。二度目には、雰囲気が変わり、三度目には、瞳の色が変わる。四度目には、牙や角が生えて……相馬の場合、いや、私たち、子孫はそれだけで済んでいる。行き過ぎた鬼は……人を喰うからな」
「……私、相馬に喰われましたけど。っていうか、一気に瞳の色が変わるわけじゃないいんですね。だから、女遊びをしていた時、新月の夜に女の人たちと過ごしたとしても、大丈夫だったのか……」
「……気にするとこ、そこなん?」
「あ、心配しないでください!相馬とつるむようになってから、エスカレートはしましたけど……虐め自体は、逆に面白いですし」
面白い。
本当に、面白い。
歪んだ笑みを浮かべる彼女たちは、自分の弱さを晒していて。
それを見ると、腹の底から笑いが出るのだ。
「……例えば?」
「教材が破かれたり、捨てられたり……液体を掛けられたり、罵詈雑言を浴びさせられたり、他には何があったかな……」
「……よく、不登校にならんかったな」
感心したように言われ、私は笑った。
「柚香がいましたし……確かに相馬達と付き合うようになってから、そう言う事は増えたけれど、その分、新しい友達も、守ってくれる友達も増えましたから」
相馬と出会って、世界が広がった。
「ま、その分、失踪時に痕跡を残さぬよう、大変だったんですけど」
「うちの情報網を潜り抜けたんやもんな……どんな力を使ったんや?」
不思議そうな京子さんを見、私は笑みを深めた。
「最強の情報屋を使っただけですよ」


