【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



(相変わらず、強いなー)


女の私でも思わず、惚れ惚れとする姐さんぶりである。


「……京子さん?私、相馬と二人で双子を見に行くつもりだったんですけど」


「まだ、見たことがないんやろ?しっとる。でも、その恰好はマズイ」


京子さんは私の服に目を落とし、そう言った。


「やっぱ、血だらけはまずいですか……意外と、血の周りが良くて」


「……手当ては?」


「相馬が力で」


「そうか……」


相馬が私を引き入れたくないと恐れる、御園という家の闇。


彼女も、それに押しつぶされそうになった人である。

弟である相馬のこともよく分かっているからこそ、彼女は家のことから何度か、相馬を引き離そうとしていた。


その時は、必ずと言っていいほど、相馬は不安定だった。


(お姉さん、なんだもんなー)


「なあ、沙耶」


「はい?」


「うちの家の話……なんやけど」


「はい」


隠されている、御園の闇の姿。


それを抱えるのは、その家を継ぐものだった。


「御園の初代の伴侶が鬼やったことから……御園の直系の男児は、人外の力を持っていた。素質や、色々な関門をクリアして、鬼化の差は変わる。例えば、うちの兄……総一郎兄さんは直系の長男でありながら、鬼化はしない人やった。それどころか、体が弱くて、病院を転々とする。……混血などで、そんなことが起こったりするんや。水樹と氷月はせいぜい、瞳の色が変わる程度。つまり、一番、鬼としての素質を持ち、その力を開花させているんは、相馬なんや。幼い頃から、母親に不遇を強いられ、苦しんどったのに……跡継ぎとしての重責も背負って、あの子からは笑顔が消えた」


鬼。

聞いたことはあったけど、本当にいるのか。
……なんて、相馬の角に興奮した私が言う台詞ではない、か。



自分の性癖を発見したみたいで気持ちが悪いが、事実であるのがまた、悲しい。


あの父親の性格を受け継いだだけでも、異常と呼ばれるのに……変な性癖が加わったら、悲しい未来しか見えない……違う意味で。