「……鶴はさ、なんで、ここにいるの?天国に、行かないの?」
彼岸花、三途の川、何もないその世界で、私が認識できる、唯一の人。
それが、鶴で。
不思議に思った。
なんで、ここにいるのだろうか、と。
「行かないわよ!行けないの。私は、自殺しちゃったから」
「えっ……」
「いやねぇ、そんな顔、しないで頂戴」
さらりと、自分の人間の時のことを言う鶴は、全く気にしてなさそうで。
「ちょっとね~、嫌なことがあって。首をグサッと」
「っ……」
「失恋、って言ったら、可愛く聞こえるけど……そんな可愛い理由じゃないんだな。これが。まぁ、失恋が始まりだったわけだけど」
「……辛くなかった?」
私は、恋をしたことがない。
否、相馬に逃げるように想いを伝えてきたから、失恋というものを経験する時間がなかったんだ。
「辛くなかったと言ったら、嘘になるけれど……でも、人を裏切ったり、嘘をつくより、楽だったから。まぁ、1000年以上、前の話だし。あれなんだけど」
「……ずっと、ここにいるの?」
「そうね。神様からお許しが出たら、輪廻に還れるかも」
鶴は、なんてね、と、笑う。


