「沙耶、おはよう」 最近の日課。 まず、起きたら、沙耶に挨拶をする。 返事が返ってくることはないけれど、それだけで、俺はまだ、大丈夫だと思える。 沙耶を失う恐怖。 それに呑まれた暁には、俺は我を失うだろう。 そうならないためにも、俺は沙耶の側を離れない。 「早く、目覚めろよ……」 沙耶の左手の薬指。 そこに、勝手だが、指輪をつけて。 「お前が目覚めたら、ちゃんと、言うから」 どうか、今だけは。 この穏やかな流れに、身を任せていたい。