娘の沙耶も、そこは健斗に似たらしく。
誰もまだ、来ていない病室で仮眠し始めた桜を見届け、俺は隣の病室をノックした。
「……どうぞ」
中からの許可を貰い、入れば。
「やっぱり、父さんの言う通り、気づいてたんですか……」
「健斗に情報の扱い方を教えたのは、俺だぞ?わからないはずがない」
お腹の大きな、沙耶がいた。
「おかしいと思ったんだ。やけに、直樹がここに出入りしているらしいし、何より、柏原奈櫻は健斗の母親の名前だろ?もう、この世にいねぇはずだし、奈櫻なんて名前のやつはたくさんいても、奈櫻っていう字はあんまり使われることはないだろ?」
困った顔をする沙耶は、すでに父親から俺が情報をつかんだことを聞いているらしく。
「あの……」
「安心しろ。お前の言いたいことはわかってる。相馬に言うなと言うのだろう?だが、これから、みんな集まるぞ」
何せ、隣の部屋だ。
バレる可能性が高いと思うのだが。
「ふふっ、ここ、特別な階ですしね。プライベートなところっていうか……桜と紗夜華さんがここにいるのもそれが理由でしょう?だから、私はバレないように、直樹さんに“御願い”したんです」
沙耶は頭がキレる方だ。
男に生まれていたら、健斗の跡を継いだであろう。
「私を、姫宮グループの遠い親戚の娘ということにしてほしいと。快く、承諾してくださいましたよ」
その場の状況判断から行動に至るまで、沙耶は健斗を彷彿とさせる。
おまけに周囲の人間によれば、彼女が怒ると、薫を彷彿させるという。
そんな、奇跡的な存在。
何でもでき、美人で、性格も良い。
そんな彼女の命は、もうすぐ尽きる。


