「……と、いうか、正直ですね、沙耶さんって、もっと悪女なのかと思ってました」


ふと、沙名ちゃんがそういった。


「あ、悪女……?え、そんなに性格悪く見える?いや、別に良いとは言わないけどさ」


あの父親の性格だ。


悪くないとは、言わない。


「いや、噂で……」


「あ、ああ。なるほど。で、どう見える?やっぱり、悪女?すんごく、嫌なんだけど」


両頬に手を当て、顔を揉んでみる。


だからといって、顔が変わるわけでもないが。


「あははっ、単純に、沙耶の美貌を妬んでるだけでしょ。……台所、借りるねー」


柚香は他人事と言うように笑いながら、立ち上がる。


「美貌って!待って!それは、訂正して!」


美貌というのは、薫や相馬みたいな人間を言うのであって、私みたいなのは……。


「いや、沙耶さんはお世辞抜きで美人ですよ。さっき、勝手に拝見しましたけど、ご両親も美人ですね」


「それで、頭よくて、運動神経がよくて、お金持ち……羨ましい!」


「…………そうかい?変な男に絡まれるし、変な男達の世話係を任されるし、めんどくさいパーティーとか付き合いあるし、良いことなんてないけど」



無い物ねだりと言うやつだろうか。


欲しいなら、くれてやるが。