『お前のお陰で、過去のことに苛まれなくてすんだ。礼を言う』


お母さんのことで弱くなる相馬を、支えたかった。


それだけだった。

一人にしたくなかった。


『そのつもりで来たのに……また、命を分けて貰ったちゃったね、ごめん』


『馬鹿言うな。俺の好きでやっていることだ。お前が気にする必要はねぇ。んなことより、ちゃんと、学校行けよ?柚香が心配している』


『フフ、わかってるわよ。……じゃあ、ね』


次、いつ会えるのか、なんて聞かない。


それが、私たちの当たり前で。


このときも、次の約束はしなかった。


すれば、良かったのかな。


でも、したくなかった。


私に縛られるものを、彼に遺しては駄目だから。