□沙耶side■




『んじゃ、またな』


相馬を訪ねてから、二週間が経った。

そろそろ、学校に戻らなくちゃならなくて。


『うん。お仕事、頑張って。無理をしすぎたら、ダメだよー?』


『倒れたお前に言われたくねぇよ』


相馬は微笑みながら、私の頭を撫でてくれた。


私は、そんな相馬の行為が好きだ。


キスとか、肌を触れあわせるのとかではなく、こんな、些細な行為が私は好き。


『……そういや、なんの用事だったんだ?』


帰るときになって、彼はそう私に尋ねた。


私が彼を訪ねた理由は、二つ。


1つは、話を聞いてもらうため。


もう1つは……


『5月8日、あんたの誕生日』


微笑むと、彼は目を見開いて。


『そういえば、って思ったでしょう?』


彼は私のことを気にして、忘れていたようだ。


折角の誕生日なのに。


でもまぁ、自分の過去のことについて話すには、充分に相応しい日だったと思う。


『フッ、なんか、色々あって忘れてた』


『やっぱり?そんなことだろうとは、思っていたけど……』