「…………………はい?」
なんか、とんでもない言葉……。
「結婚してくれない?って言って、二ヶ月経つけど……その返事は、別に良いんだ。焦っているわけでもないし、まだ、高校生だからね。でもさ、この調子であと何年、お父さんと付き合っていくつもり?」
……正論である。
人を一人育てるのには、3000万だと聞く。
そんなお金を、私はいつまで払い続けるのだろうか。
いつまで、父親と付き合う?
「……わからないわ」
「でしょ?何回か、柚香のお父さんにあったことはあるよ。あっちも家庭を持っているみたいだね」
「ええ。ある日、急にいなくなったかと思えば……」
家族を作っていた。
お母さんに捨てられ、父さんが側にいたなか、なにも持たない私は、ある日、突然、お父さんにも捨てられた。
愛した人ができたのだと理解しようと思っても、無理で。
苦しくて、泣いていたときに沙耶に出逢った。
沙耶の両親も、お兄ちゃんたちも、何でも教えてくれた。
沙耶と同じ習いごと、同じご飯。同じ服。
何もかも。
遠慮すれば、お父さんを探しだして、養育費を踏んだくってきてくれて。
私は嬉しさと、悔しさに、すべてを返すと約束した。
『子供は、親に甘えるべきや。子供の世界のすべては、親なんやから……柚香、君も僕の大事な娘やけんな?我が儘をいっぱい言い。沙耶は、言わなさすぎて……』
健斗さんは、愛情の薄い人ではなかった。
誰よりも、深く、優しい人。
「……千歳にまで、迷惑はかけられないわ」
申し出は、ありがたい。
けど、私は……


