『……こーら、不安にならないの。貴女の傍には、止めてくれる存在がいるじゃない』
これからの未来が怖くなって俯くと、沙羅さんが苦笑しながら、私の頭を小突いた。
『そうよ。飛鷹が、いてくれて……』
そうだ。飛鷹がいてくれる。
何をしても、傍には、飛鷹が……。
『……でも、私のせいで、飛鷹が怪我をして……』
『『……』』
『私、無知のせいで、何もできないんです。生まれたときから、記憶があれば、良かった、んですけど』
飛鷹みたいに、記憶があれば。
あったら、分かち合えたはずだ。
『……良いものじゃないからね。隠したかったんだと思うわよ?』
『沙羅さんの人生、そんなにひどいんですか』
『んー、ひどいね。享年、18だし』
さらっと告げられた言葉に、思わず、息を呑む。
『っ……』
『……やだなぁ。そんな顔、しないで?そうしなければ、いけなかったんだし……それだけで、数多の人の命を救えたんだもん。良いじゃんか。それに、ねぇ?』
沙羅さんの死が、数多の人を救ったのか。
どんな、人生なんだ。
『……っ、紅鈴、さんは?』
ちょっと怖いが、訊ねる。
『私は、長生きしたわ。享年、んー、85?だっけ』
すると、のんびりとした口調で、答えた。
『皇后、って、立場にいたんですよね?』
『そうそう。大燕鳳帝国の中で、一番高い女性の身分ね』
『私の時は、皇太后陛下がいらっしゃらなかったからね。燎飛様の母上が……』
訊ねると、それに沙羅さんが説明を付け加えてくれ、紅鈴さんも笑って、言った。


