ザンッ……
「……やはりな」
座り込み、私は、見上げた。
視界に映ったのは……
「……そなたに逢うのは、初めまして、じゃな。怖がらせて、すまんの。沙耶」
目の前にいて、私に手を伸ばしていた青年は、彼女に斬られ、蹲っていて。
「……っ、ひ、め……か……っ!」
ゴボッと、血を吐きながらも、目には憎悪。
姫と呼ばれた女の人は、躊躇いもなく、再び、青年の体に刀先を沈めた。
「……草志の大事な女で、相馬の恋人じゃ。誰が、貴様に渡すか。研究材料じゃろうが、なんじゃろうが、沙耶は渡さぬ」
クルリと、剣を回して。
「戻って、主に伝ええ。妾が還ってきたからには、そなたの好きにはもう、させん、とな。しっかり、今までの分も仇を討たせてもらう」
ドロリ、と、溶ける青年の体。
「ヒッ、」
現実離れした、その光景に悲鳴が出る。
「……共に還るぞ。とも、伝ええ」
黒いスライムみたいに溶けた、青年の体。
いや、もう、青年ではないのだろう。
これは、化け物だったのだから。
「……薫、力を借りる」
彼女の呟きが、聞こえた。
すると、彼女の持つ剣についていた石は、赤く光り……炎が、燃え上がる。
その炎は、黒いスライムみたいなものを包み、燃やしてしまう。
夢のような、出来事だ。
震える、指先。
嗚呼、この人は自分の手を染めずに、人を殺すことができる人。
「……大丈夫かえ?」
銀色の髪、金色の瞳。
雪のように白い肌に、ほっそりとした長い指。
纏っているものは、現代のものなのに、彼女の容姿は明らかに、京子さんたちと比べても、異常な美しさで。
何故か、涙が出た。
……否、泣きそうになった。
「すまんの……」
そっと、頬を撫でられる。
「そなたのことも、みんな、みんな、妾が護るからの……沙耶、そなたは、自分の信じる道を歩いての」
真実。
……それは、なんですか?


