【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



ザンッ……


「……やはりな」


座り込み、私は、見上げた。


視界に映ったのは……


「……そなたに逢うのは、初めまして、じゃな。怖がらせて、すまんの。沙耶」


目の前にいて、私に手を伸ばしていた青年は、彼女に斬られ、蹲っていて。


「……っ、ひ、め……か……っ!」



ゴボッと、血を吐きながらも、目には憎悪。


姫と呼ばれた女の人は、躊躇いもなく、再び、青年の体に刀先を沈めた。


「……草志の大事な女で、相馬の恋人じゃ。誰が、貴様に渡すか。研究材料じゃろうが、なんじゃろうが、沙耶は渡さぬ」


クルリと、剣を回して。


「戻って、主に伝ええ。妾が還ってきたからには、そなたの好きにはもう、させん、とな。しっかり、今までの分も仇を討たせてもらう」


ドロリ、と、溶ける青年の体。


「ヒッ、」


現実離れした、その光景に悲鳴が出る。


「……共に還るぞ。とも、伝ええ」


黒いスライムみたいに溶けた、青年の体。


いや、もう、青年ではないのだろう。


これは、化け物だったのだから。


「……薫、力を借りる」


彼女の呟きが、聞こえた。


すると、彼女の持つ剣についていた石は、赤く光り……炎が、燃え上がる。


その炎は、黒いスライムみたいなものを包み、燃やしてしまう。


夢のような、出来事だ。


震える、指先。


嗚呼、この人は自分の手を染めずに、人を殺すことができる人。


「……大丈夫かえ?」


銀色の髪、金色の瞳。


雪のように白い肌に、ほっそりとした長い指。


纏っているものは、現代のものなのに、彼女の容姿は明らかに、京子さんたちと比べても、異常な美しさで。


何故か、涙が出た。


……否、泣きそうになった。


「すまんの……」


そっと、頬を撫でられる。


「そなたのことも、みんな、みんな、妾が護るからの……沙耶、そなたは、自分の信じる道を歩いての」



真実。

……それは、なんですか?