「逃げないでよ。……折角、迎えに来たのに」
始まりの巫女。
それは、私だった。
相馬の前世に愛され、愛し、幸せな記憶がいっぱいあって……その反面、悲しいこともたくさんあって。
分かってた。
わかっていた、はず、だった。
『忘れろ、沙耶。思い出すな、お前は……っ』
……相馬が隠したかったのは、この人の存在?
「まぁ、いいや。……思い、出させてあげる」
やめて。
誰か、助けて。
思い出したくないの。
誰か、誰か、誰か、誰か……
「……た、す……」
青年の手が、私に伸びる。
顔に覆い被さろうと、近づいてくる。
「……ヒッ、やっ……やめっ……」
怖い。
ここまで、恐怖を感じたことなんてない。
どうして、私は……こんなにも。
「……助けてっ!」
こんなにも、無力なのだろう。


