【完】☆真実の“愛”―君だけを―2




「……よく、それを大人しく受け入れたね……」


「そう?ま、できちゃったもんは、しゃーねーしって感じだったけど。勇兄ちゃん、なんだかんだ言って、麻衣ちゃんのことを大事にしているし、麻衣ちゃんの側にずっと付き添っているみたいだし、大体、医者って……」


勇兄ちゃんが言うには、


『麻衣子のこと、もう少し、独り占めしたかったのに……』


と、いうことだ。


結婚に踏み切れてなかった人間が、何を言うと思ったが。


「え?」


「え?」


柚香は目をぱちくりさせ、身を乗り出す。


「医者?」


「あれ?これも、言ってないっけ?勇兄ちゃんは、お医者さんだよ?」


「嘘!?」


「ほんと、ほんと。あの見た目で、暴走族の元トップでありながら、家の跡継いでる」


「家!?家って……」


「兄ちゃんは父さんにとって、あくまで融子だからね。だから、名字が“松山”でしょう?父さんの幼馴染みが亡くなった後、その息子だった勇兄ちゃんを、父さんが引き取ったの」


松山久貴さん。


昔から、父さんの我が儘に付き合い、父さんに財布がわりにもされていた、父さんのことを一番に理解している人。


まだ、私が生まれる前に、事故死した。


最期まで、先立った妻を想っていた人。


「……で、その、勇兄ちゃんのお父さんさ、金持ちさんだったんだ。医者家系で、両親に見合いさせられて……その見合いで、出逢った人が勇兄ちゃんのお母さん」


母さんの話だと、本当に美しい人だったと聞く。


勇兄ちゃんのお母さんは、久貴さんと深く、愛し合っていたけれど……身体が弱く、亡くなってしまった。


再婚を進めても、断固として拒み、勇兄ちゃんを深く、大事にしていた。


そんな久貴さんは、裏の仕事で動いている途中に……


恐らく、久貴さんを消したのは、あの人。


「そんなお父さんのようにって、勇兄ちゃんはお医者さんになったんだよ」


「……あの人、単純にチャラい人かと」


「そう思うのも、仕方ないよねー」


新聞の一面を飾り、騒がれた久貴さんの死。


あんな、死に方をしたのだから、当たり前だが。