あの時、俺が君と同じ時間を生きていたなら。 あの時、君を連れて逃げられる力が俺にあったなら。 あの時、君を抱えて跳ぶ、翼があったなら。 ”なら“を、俺たちは繰り返す。 「行くよ」 ベランダに出て、目を閉じる。 漆黒の闇に、溶けるように生える人ではない証のもの。 漆黒の羽が、闇で舞って。 俺は、下を目指して飛び降りた。