真っ直ぐ歩くのも困難なほどの砂嵐の中を進む旅人。

その目前。

上空から巨大な影が飛来し、地響きと共に旅人の行く手を遮った。

ドラゴンと呼ばれる幻想種。

硬い鱗、一対の頭角を持ち、高熱のブレスを吐くというのが一般的な認識だ。

旅慣れていない冒険者達には脅威であり、熟練した騎士や戦闘職でさえ、時として命を奪われる事がある。

そのドラゴンを見据え、旅人は薄く笑った。

口元を覆った外套を、片手でグイと引き下げる。

フードから覗くのは、意志の強そうな太い眉、頑固そうな瞳。

額に巻いた赤い鉢巻きが、砂嵐に靡いた。

「ドラゴンとは丁度いい。長き放浪の末に鍛えた練功、お前で試させてもらう」

纏った砂除けの外套を、投げ捨てる。

一気に吹き飛ばされた外套よりも速く、その旅人の青年は駆け出し、ドラゴンの強靱な顎に己の右拳を見舞った!

「ライジングドラゴンッ、ナッコォオォォオォオッ! 」