…それは、様々な要素が偶然に結び付いた、まぐれという名の奇跡だった。

ここが、縁のある天神学園だった事。

リュートが魔力を持っていた事。

彼の行っていたのが、これまた縁のある拳法の修行だった事。

幾つもの縁と偶然の結果。

そしてたまたまリュートが噛んで発してしまった言葉が『勇者えいれい拳』だった事。

「う…おっ…?」

ガクン、と。

リュートの膝が落ちる。

強烈なまでの魔力の消耗。

何度か試してみた勇者精霊拳の魔力消耗とは、明らかに異なる。

全身から吸い上げられる魔力は、喪失感にも近く。

「な…んだっ…これっ…?」

彼ほどのタフネスが、立っていられないほどの消耗を強いられ、思わず両膝をつく。

明滅する眼前。

眩いばかりの日の光よりも、更に目前を白く染めるほどの閃光の末。