けどね、わたしも拓麻のこと大好きなのは、変わらないよ。


これまでも、これからも。




「俺も好き。大好き」


「うん、うん……!」



わたしの彼氏は幼なじみで、軽音部に所属していて、かっこよくて、みんなに頼りにされていて。


そして、わたしが最もときめく、愛しくてしょうがない、かけがえのない特別な人。





密着させていた体を離して、拓麻の隣に笑顔で並ぶ。


すると、拓麻が手を差し出した。




「奈々子、帰ろ」




ここで名前呼ぶとか、反則。


……だから、きみはずるい。


うるさい鼓動を気にしながら、拓麻の手に自分の手を重ね、ぎゅっと握り締めた。




2人で帰る、茜色で彩られた通学路は、キラキラと鮮やかに輝いているように感じた。


軽やかに吹いた風に導かれ、視界を上へずらす。



見上げた空は、とても澄んでいた。





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