【短】だから、きみはずるい。




「恥ずいって、何が?」



2人だけの帰り道に、ふたつの影が伸びていく。


短い沈黙の後、拓麻はたどたどしく口を開いた。



「俺さ、軽音部でベースと歌詞を担当してるんだ」


「へぇ、そうだったんだ」


「……で、その歌詞が、その、主に恋愛というか、ラブソングというか……」



拓麻が歌詞を……。


元から音楽が好きだったのは知ってたけど、そういう才能もあったんだ。


意外だ。



「ほとんどが、ナナのこと想いながら書いた詩だから、聴かれるのちょっと恥ずい」



拓麻は耳を赤に染めながら、照れくさそうに呟いた。



え?


そんなことで、強く拒否ってたの?



あんなにイライラしてた自分が嘘みたいに、溶けて、消えていく。