君を愛した時間〜残した宝物

私は、咄嗟に足を後ろに引いた。
「すみません…」
「いや…いいんだ…」
俺は伸ばした手を引いた。
「歩けるか?」
「…」
私は小さく頷いた。
俺は、びしょ濡れになって小刻み震えて弱々しく頷くセラを見て……。
《えっ!…》
「あの!!」
俺はセラを抱き上げ小走りに歩きだした。
「こっちの方が早い!!掴まってろ!」
私は、心さんの首に手を伸ばし掴まった。
《温かい…》
私は目を閉じた。
俺はセラを強く抱きしめ、小屋を目指した。
《あっ!》
「おい!あれか?!」
俺は、セラを見た。
「…」
セラは目を閉じたまま反応が無い。
「おい!おい!しっかりしろ!」
俺は、防波堤を抜け小屋の扉を蹴っ飛ばした。
「はぁーはぁーはぁー」
小屋の中に入ると、古びたボートや大きな網が置いてあった。
「おい!セラ!?セラ!?」
俺は、セラをボートの中に寝かした。
「セラ!セラ!」
俺は、セラの頬を叩いた。
「んっ…」
セラが反応した。
「おい!セラ!起きろ!」
私を、呼んでいる……私の名前…。
ゆっくり目を開けた…目の前に…私の目の前に…。
「あっ!!私…すみません!」私は、起き上がり座ったまま頭を下げた。