俺様御曹司とナイショの社内恋愛

もし彼女たちに尻尾がついていたら、ちぎれんばかりに振っているのが見えるようだ。

誰でもいいから、代わってほしいよ。

わたしが求めているのは、俺様な年下上司じゃなくて、平穏でなじんだ職場なのに。

「おはようございます」

いつもエントランスの清掃をしてくれる業者の女性と挨拶を交わす。毎朝のように顔を合わせるから、すっかりおなじみになっている。

「はい、おはよう。そろそろ梅雨入りかしらねえ」

「うわー、ほんとですかー」

「季節の変わり目って風邪ひきやすくなるから、気をつけてねー」

「ありがとうございます」
ささやかなやりとりに、心が和む。


デスクにつくと程なく、白石もやってきた。

「おはようございます」

「おはよう川本さん、今朝、俺の顔見るなり避けていきましたね」
笑顔が無駄に爽やかだ。

「ぇ・・・」

そういうことは、気づいても口にしないのがマナーでは。