俺様御曹司とナイショの社内恋愛

白石だけが、打ち合わせだ、社内研修だ、と忙しそうで、ほとんど席にいなかった。

新しいデスクを拭きながら、郁は内心ため息をつく。

「ごめん、川本さん、放置しちゃって。もう5時だから上がって」
白石が、padを小脇に足早に戻ってくる。

「あ、はい」

「明日、ランチごちそうするから」
後ろを通りすぎざま、彼がそう告げた。

「そんな、お構いなく」
反射的に、答える。

タン、とデスクに広げた彼の手のひらが置かれた。

身をかがめて、背後からこちらをのぞきこんでくる。

「川本さん」

「・・・はぃ」

「“上司” の誘いは受けたほうがいいんじゃないですか?」

なぜそこで丁寧語。そして得体の知れない威圧感。

「はい・・・」

年下の男性を初めて、怖い、と感じた瞬間だった。