「中峰!!!ちょっとこっち来い!!!」


広い社内に響く怒号
これは1日に1回は見る光景
その殆どは……この私、中峰 季誉が原因だ



私は怯えながらも怒号の主であり
この大手IT企業の若き社長
鳥塚 春一のディスクへ向かう



季「しゃ、社長…私…また何か…」


春「何かじゃねぇ!!!毎度毎度
同じミスしやがって!!」



社長は手に持っていた発注書を
机の上に乱暴に置いた
その音は静かな社内に響き渡った


春「危うく取り引き先に間違った物を
送る所だったんだぞ!?
いつもあんだけ確認しろって言った筈だ
何でこんなミスが起こるんだ!?」




社長長い髪を振り乱すと切れ長の目が
こちらを睨んでいた




私は慌てて発注書を見返す
確かに先方から頼まれていたものと
私が書いた発注書の商品は商品名が
異なっていた




季「た、大変申し訳ありませんでした!!!」
春「謝る暇があんなら早く書き直せ!」
季「は、はい!」



私は急いでディスクへ戻る
そんな私を見て周りは



「今日も一段と酷かったわね。中峰さん」
「社長ももう少し優しく言ってあげれば…」




「これで通算何回目だよ…」
「社長、中峰さんにはとくに厳しいよな」
「中峰さん大変だろうな」




周りはそんな同情の声を挙げる
私だって…真面目にやってるつもり…
でも、それは中々実ってはくれない



春「お前ら…他人の心配する前に
自分の心配しろ!
企画書出来てんのか!?」



社長の喝に皆は怯えながら自席へ戻る
背の高い(190前後との噂)社長に
見下ろされると何か分からない圧を感じる




春「それ午前中の所で直せよ
直し終わったら俺のディスクに置いとけ
お前はそれから昼飯を食え」



そう言って社長は出掛けて行った

社長は厳しい物言いだが、この会社で
事情が無い限り辞めた人は見た事がない
皆、社長が厳しいのは保々1人でこの会社を
大きくした社長を尊敬しているから


社長の努力や懸命さを皆は信じている
私も憧れているし、尊敬もしている
怒られてばっかりだけど辞める気は
これっぽっちもないのだ