仕事も終わり、陽は携帯を握りしめて、雪人の番号を打ち込んだ。
しかし、「通話」のボタンをなかなか押せずにいた。

(ど、どうしよう・・・)

そして、意を決して陽は「通話」のボタンを押した。

ーーリリリリ、リリリリ

ーーリリリリ、リリリリ

ーーガチャっ、

「あっ、あのっ!」

ーー「只今、留守にしております。ピーっという音のあとにメッセージをお入れください」

(な、なんだ・・留守番か、、)

少しホッとしたような、少し残念のような気持ちを抱えて、陽は留守番メッセージに電話をかけたことだけ伝えることにした。

ーーピーっ・・

「もしもし、ひいらーーガチャ

「もしもし、羽衣です」

「わっっっっっ!!」

「・・もしかして、柊木さん?」

「は、はいっ!すみません、急にお電話してしまってっ、、」

突然の雪人との電話に、心の準備ができていたなかった陽は焦りながらも、声が聞けたことに嬉しさを感じた

「いいえ、僕のほうこそすみません、お風呂に入っていたので、電話をとるのが遅くなってしまいました。」

(お、お風呂・・)

陽はあのお風呂に雪人が入っていたのかと想像してしまい、1人顔を真っ赤にした

(わ、わたしっ、何考えてるのっっ!)

ベッドの上で膝を抱えて顔を赤らめたまま、頭をもたげた。

「もしもし?柊木さん?大丈夫ですか??」

ゴトゴトと電話の向こうからする音を聞いて、心配した雪人が言った

「大丈夫ですっ、それより、すみません、何だかタイミングの悪いときにお電話してしまったようで・・」

申し訳なさそうに陽は言った

「そんなことありませんよ、柊木さんからの電話だったら、僕はいつでも大歓迎です。」

「またそんなこと言って、、そういうことは他の女の子に言ってあげてください。羽衣さんにそう言ってもらえると、きっとみんな喜びますよ?」

「・・柊木さんは喜んでくれないんですか?」

いたずらな笑みを浮かべて雪人は言った

「えっ、そ、それは・・」

返答に困った陽は、顔を赤くして俯いてしまった。

(きっと、柊木さんは今困った顔をして顔を真っ赤にさせてるんだろうな)

雪人はそう思いながら1人微笑んだ

「冗談ですよ、柊木さんから電話してくださって嬉しかったです、ありがとうございます。

柊木さんも明日はお仕事でしょうから、名残惜しいですが、今日はおやすみにしましょう」

「そうですね、あの、おやすみなさい。」

陽は少し寂しく感じながらも、そう言った

「はい、おやすみなさい。」

雪人は陽の電話を切る音を聞いて、自分も電話を切った。