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しばらく車を走らせながら、2人は他愛もない話をしていた。

「柊木さんの好きな食べ物は何ですか?」

「んー、、、羊羹、ですかね」

「羊羹、、意外ですね。僕も仕事柄、羊羹はよくいただくんですよ。よかったら、今度差し上げますね。」

穏やかに微笑みながら雪人は言った

「えっ!いいんですかっっ!すごく楽しみですっっ!」

そう言って、まるで少女のように顔を輝かせた陽を見て、雪人は声を出して笑った。

「そんなに喜んでいただけて僕も嬉しいです。受け取っていただけるということは、また会っていただけるということですね?」

いたずらな笑みを浮かべて横目で陽を見て雪人は言った。

「え、、、あっ、、」

無意識に発した自分の言葉を思い返して、陽は恥ずかしくなり俯いた。

「ふふっ、本当に可愛らしい方だ。あなたといると時間が経つのも忘れてしまいますね」

優しく微笑む雪人を見て、

(あ、、、この顔は本物だ、、)

陽はそう感じた。今の笑顔は、いつもの飾ったような笑顔ではなく、心からの笑顔だと。

「・・そっちのほうがいいです、、」

小さな声で陽は言った

「え?」

雪人は何のことかわからず聞き返した

「いつもの飾ったような言葉や態度より、わたしは今の羽衣さんのほうが好きです」

そう言って陽は雪人ににっこりと微笑んだ。

「っ、柊木さん、、それ、わざとやってますか?」

少し頬を赤く染めた雪人が陽に言った

「??それとは??」

何のことだと言わんばかりに、頭に?マークを浮かべた陽が聞き返す

( 無自覚ですか、、まったくタチが悪いですね。・・・車に乗る前にした約束を破ってしまいそうになりましたよ、、)

なんとか理性で衝動をおさえこんで、陽のほうをちらっと見ると、うとうととしている陽の様子が目に入った。

「眠たいんですか?」

信号で停まったときに、雪人が覗き込むようにして陽に聞くと

「・・ん、・・ぃえ、だいじょ・・」

ーースースー

最後まで言い終わらないうちに言葉は寝息に変わった。

「寝てしまったんですか、、、まったく、あなたは僕のことを警戒しているのでは?」

困ったように笑いながら、雪人は近くの海岸の駐車場に車を停めた。