エントランスについた陽は、ソファに腰掛けて、さっきまでの光景を思い浮かべた。

( 綺麗だったなぁ、羽衣さん。あんなに綺麗にお茶を点てる人、初めて見たかも、、)

そんなことを考えながら感心していると、

「お嬢さん、おひとりですか?」

と声がしたほうを見ると、雪人がすぐ側に立っていた。

「わっ、羽衣さんっ、、どうして、イベントは??」

「僕の役目は終わりましたので、会場を出て行く柊木さんを追いかけてきてしまいました」

そう言って微笑むと、

「それにしても驚きました。まさか、こんなところであなたにお会いできるなんてっ!」

驚いた顔をして話す雪人に陽は、

「友人に連れられて、たまたまです。」

ぶっきらぼうに答えた。

雪人はその様子に笑みを浮かべながら、

「たまたまでも、僕は嬉しいですよ。どうでしたか?僕の仕事の顔は?柊木さんが少しでも僕に興味をもってくれると嬉しいなぁ。」

首を傾けて、覗き込むようにいたずらな笑みを浮かべて言った。

「〜〜っっ///ちょっとっ、ち、近いですっ///」

陽は慌てて雪人の胸を押し返した。
そして、バッと立ち上がり、その場から離れようとすると、

「もう行っちゃうんですか?」

雪人が笑みを浮かべながらそう尋ねると、

「あなたから離れるためです!!!!」

陽はそう言うとスタスタと歩きだした。
数歩進んだところで急に立ち止まり、雪人のほうに振り返った。

「?」

雪人はどうしたものかとその様子を伺っていると、

陽は、なにかを悩んでいる様子で、しかし、意を決したように雪人を見て、

「羽衣さんのお茶を点てる姿はとてと綺麗でした。わたしはあんなにも楽しそうに、幸せそうにお茶を点てる人を初めて見ました。

男性としての、羽衣 雪人は大嫌いですが、茶道家としての羽衣 雪人は、、嫌いではありません・・・///」

顔を赤く染めてそう言った陽は、

「失礼しますっっ、、」

と挨拶をして、その場から離れて行った。