「失礼します。ベットを…あれ?」
担当の教員は見当たらず、誰もいなかった。
「そういや、今日は午後から来るって言ってた気がする。」
「…えー。そうなの?まあ、勝手に借りればいっか。」
私と白はベットのカーテンを開けて入る。
「とりあえず、一時間はサボる。」
「…それ、苦手な数学避けるためだろどうせ。」
否定はしない。苦手だから。
「まあ、俺もそのぐらいは休みたいかも…。精神的に辛い。」
私は少し笑いが溢れる。あの白がここまで動揺するのだから、それほどだ。

(変態は変態が苦手なのか。)


そして、ふと思い出す。…いや、二人っきりという状況、そして、一連の流れで、何故私は無関心、というより、何も突っ込みを入れなかったんだろうか。

(お風呂場で、…キスされなかったっけ。)

しかも、服も脱がされてた。下着も見られた。それも、今まで、家族のように思っていた幼馴染からだ。

(え、待って、気まずい。ものすごくどうすれば良いか分からないんだけど。)

いつものように接することはできるのだろうか。というか、どうして、あんなことをしたのかがわからない。

(スキンシップ…。は、ないか。 私が泣きそうなのを止めるためとか!だから、気にする必要ない。なかったことにしちゃえばいいんだ!)

しかし、昨日体を啄ばまれた部分が熱を帯びていく。白が私を熱い視線で見つめたこと、私の体に絡みつくかのように触れた指先、かすかにもれる吐息と冷たい水が私の身体にかかり、与える心地よさ。あの時のことをもっともっと思い出すと、身体のなかにあの時の行き場のないもどかしい気持ちが溢れてくる。自分が別の誰かを体験してたかのようだった。

(ただ、彼に触れていたい。相手が欲しい…って、何考えるの!?無し、なしなしなし!私は白とはそういうんじゃない!漫画とかゲームとか、私の好きなのは…変態じゃない人!!)


私は布団の中でジタバタとしたあと、枕に抱きつき、いつのまにか、眠りに落ちていた。





「おはよ。猫。」
有理香が保健室に入ってくる。どうやら心配をしてきてくれみたいだ。私はぼやけながらも時計を見て、一時間目が過ぎてることをしっかりと確かめた。
「…おはよう。有理香。」
「…どうしたの?なんか、もう、疲れたーって顔してるけど。ていうか、二人してサボって何してるわけ。」
「………………………色々と…………あったのよ。」
「とても面白そうな感じがするわね。」
どうやら、有理香の好奇心に少し火がついたようだ。しかし、それは昼休憩になっが長と付き合ってほしい案件である。
「これに関しては、昼休憩の時に話すわ。」
「ほほう。楽しみだわ。良いおかずになりそう。」
有理香はテキパキとくしや鏡を出してくれる。
「白起きてるかな…?」
私はカーテンを開ける。すると、白はぐっすりと眠っていた。
「…あらら。ボタン外して寝るんだ。意外だわ。」
シーツは少し乱れて、白はシャツのボタンが息苦しく感じたのが、第3、4ぐらいまで開けてる。
「なんか。雰囲気違うね。」
「えっと…。そうだね。」
私と有理香少し、まじまじと見つめてしまう。幼稚園の頃は一緒に遊び疲れて寝た、なんてことはあったけど、こう見ると、成長したんだと思った。
「…って、あ!猫、ボタンずれてる!」
「え?あ、…気がつかなかった。」
昨日の出来事の所為なのだが、ボタンがずれて止めてしまったようだ。地味に恥ずかしい。
「もう、しょうがないわね。ほら、こっち向いて!」
「べ、別にいいよ。自分でやるから。」
「ほーう。よだれの跡が見える人にできるのかしらー?」
私は焦って近くにある鏡を見つめる。そこにはただ驚いた自分の顔…、よだれの跡はなかった。
「ひ、ひどい!ないじゃん!」
「騙されるとは思わなかったわ。でも、顔赤いし、疲れてるんだから、任せな………。」
何故か有理香の手が止まる。今にも全身から汗が出そうな様子だ。
「?どうしたの。」
「な、なんでもないわ!昼休憩楽しみにしてるわ!ついでに午前全部やすんじゃいなさい!」
「え、でも。」
「いいから!休みなさい!!」
有理香は私をベットに押し付けたあと、急ぎばやに保健室を後にした。