「ユウさん、おつかれさまです。
 私は今、仕事がひと段落したところです。
 漫画、気に入ってもらえたみたいでよかったです。
 なんとなく、主人公が、私が昔好きだった人に似ていて、気に入ってます笑」

『星の彼方』の主人公は、中学生の男の子で、
優しい顔立ちで、メガネをかけている。

「…私が好きだった人のほうが、もう2段階くらいかっこよかったですけどね!」

少しおどけた調子のメッセージを送信し、真琴は帰路に着いた。

「ユウ」と話す内容は尽きないものの、ゲームの情報交換や漫画の感想が主だった。

昔好きだった人を褒めるようなメッセージを、赤の他人に送るのは、なんだか変な感じがした。

自宅に帰るまでに、近所のコンビニに立ち寄り、
明日の朝食になりそうなものを探す。

(コーヒーと、何か簡単に食べられるもの...)

口に指を当ててパンの棚を眺めていると、
背後から声がかかった。

「あれ。真琴ちゃん...ですか?」

真琴が振り返ると、そこには、スーツ姿の男性が立っていた。

痩身で、色白で、メガネをかけている。

「?」

「あー、忘れちゃった、か」

少し残念そうに笑うと、男性の長いまつげが揺れる。
顔に見覚えが、ある。

「...りゅういち、さん...」

真琴が持っていたコーヒーを落としそうになったところで、
隆一が、白い手を差し伸べて真琴の手を支えた。