授業が終わり、教室に戻ると、なんだか騒がしかった。
 わたしはあまり気に留めないようにして、自分の席に着いた。
 今日は疲れてしまった。早く家に帰りたい。

 そのとき、わたしの体に影がかかった。
 顔をあげると、クラスメイトの横原さんが険しい顔立ちをして立ってたのだ。

「あなた、嘘をついたよね。本当は教室に鍵がかかってなかった。わたしの財布をどこに隠したの?」
「財布?」

 わたしは意味が分からずにただ彼女を凝視していた。

「教室の鍵が開いていたのよ。それでわたしの財布がなくなっていた」
「そんなの知らない。教室が開いていたらそもそも鞄だって置いておくでしょう」
「そういう振りをしようとしたんじゃないの? わざとでしょう」

「何でそんなことをしないといけないの?」
「復讐でしょう」

 横原さんはわたしの鞄を強引に開けた。その中を漁った。
 彼女の手がぴくりととまった。そして、わたしの履いていた靴を引っ張り出した。

「なにこれ。何で鞄の中に靴を入れているの? 頭おかしいんじゃない?」

「関係ないわ。あなたの財布なんてどこにもないでしょう」

 わたしは彼女から靴をひったくった。

「じゃあ、誰が持っているの」
「そんなの知っているわけない」
「ねえ、それって財布じゃないの?」